【レビュー】映画『バックルームズ』と生成AI、そして幻覚、崩壊について(文:岸裕真)
概要
本記事は、ケイン・パーソンズ監督、A24製作の映画『バックルームズ』に関するレビューである。バックルームズは、2019年に匿名掲示板4chanに投稿された一枚の写真から生まれたネットミームで、黄色い壁紙と蛍光灯の無限に続くような空間が特徴である。2022年に当時16歳だったケイン・パーソンズがYouTubeに投稿した短編がバイラルし、本作は彼がA24と組んで製作した長編デビュー作となる。物語は1990年代を舞台に、家具販売員のクラークが店の地下で謎の空間を発見し、やがてセラピストのメアリーもその空間に足を踏み入れる。そこでは記憶やトラウマが呼び起こされ、現実とも幻覚ともつかない異様な世界が広がる。著者の岸裕真は、AIを「Alien Intelligence」ととらえ、自ら開発したAIとの協働で制作を行うアーティストである。彼は、バックルームズの空間が生成AIの出力する「少しだけ間違った現実」のイメージと重なると指摘するが、多くの批評家が指摘するAIの幻覚との類似は表層的なレベル0の類似に過ぎないと論じる。本質的に同型なのは、AIが自分の出力を食べ続けたときに起こす崩壊のほうであるとし、反復が人間を必要としない未来において、それでも人間が作り続けることの意味を、この映画を通じて考えたいと述べている。
(出典:Tokyo Art Beat)