サルマン・トゥールが描く、クィアな人々の物語、そして親密さと孤独
概要
ニューヨークを拠点とするパキスタン出身のアーティスト、サルマン・トゥールの個展「Someone Like You」がロンドンのコートールド美術館で開催されている。印象派やポスト印象派の名作を所蔵するこの美術館で、トゥールは2つの小展示室に19点の絵画を展示し、現代美術と古典絵画の世界を巧みにつなぐ。2020〜21年のホイットニー美術館での個展で注目を集めたトゥールは、2019年以降、自身のセクシュアリティや個人的体験をより自由に表現するようになった。パキスタンでは同性愛が法的に規制され社会的偏見も根強い中で育ったトゥールは、ニューヨークで自身のコミュニティを見出した。《The Bar on East 13th》はマネの《フォリー・ベルジェールのバー》を意識しつつ、バーテンダーが鑑賞者をまっすぐ見つめる点で異なる。《Ghost Ball》では多様な装いの人物たちが祝祭的に集う一方、《Parts and Things》や《Museum Boys》ではクローゼットに隠された欲望や記憶の断片が「ファグ・パドル」として描かれる。本展のために制作された《Fag Puddle With Carriers》はロレンツォ・ロットの《埋葬》を引用し、鑑賞者を館内の宝探しへと誘う。トゥールの絵画は、現代のソーシャルメディアを通じた苦闘や紛争の消費というテーマにも触れ、画面の人物たちは迫りくる破滅から逃げ出そうとしているかのようだ。
(出典:美術手帖)