川口雅子|これからデジタルカタログレゾネを編纂する人へ──奈良美智財団「YOSHITOMO NARA The Works」を手がかりに
概要
本稿は、2026年9月に更新された奈良美智のデジタルカタログレゾネ「YOSHITOMO NARA The Works」を事例に、川口雅子がデジタルカタログレゾネ編纂の現状と意義、今後の指針を論じるものである。カタログレゾネは全作品目録であり、真贋判断の基準や美術研究の基礎資料となるが、日本では刊行・公開が限られている。川口は、展覧会データベースと年表の刷新により、展覧会を独立レコードとして構造化し出典を明示した点を高く評価する。その上で、今後の編纂に向けた4つのヒントを提示する。第一に、美術館収蔵品データベースと地続きに考え、来歴・展覧会歴・文献歴などの歴史情報を充実させること。第二に、作品・展覧会・文献・所有者に識別子を与え、相互参照できる構造をつくること。第三に、専門家の目利きによる権威よりも、判断の根拠となる資料とドキュメンテーションを重視し公開すること。第四に、完成を待たず段階的に公開し、研究とともに継続的に更新する研究基盤として捉えることである。これらの視点が、日本のアーティストの存在感向上に資する本格的なデジタルカタログレゾネ整備の一助となることを期待している。
(出典:artscape)