影山幸一|作者不明《ネフェルタリ王妃墓の壁画(イシス女神が王妃を導くシーン)》──永遠の命「村治笙子」
概要
本記事は、紀元前13世紀に制作された作者不明の《ネフェルタリ王妃墓の壁画(イシス女神が王妃を導くシーン)》を、古代エジプト壁画・ヒエログリフ研究家の村治笙子氏のインタビューを通じて読み解くものである。村治氏は1947年東京生まれ、東洋大学文学部西洋史学科を卒業後、1988年に初めてエジプトを訪れ、以後30回以上現地に通い研究を続けてきた。記事では、王妃の谷にあるネフェルタリ王妃墓の壁画について、その制作年、画材、サイズ、構図、色彩、技法、鑑賞のポイントが詳細に解説される。壁画は「正面性の原則」と「プロポーションの原則」に基づき、顔は横顔ながら目は正面を向く独特の人体表現をとる。色彩は白・赤・黄・緑・青・黒の天然鉱物顔料で、白は神聖、赤は活性、黄は永遠、緑は生命力、青は宇宙、黒は再生を象徴する。壁画にはヒエログリフが添えられ、イシス女神が王妃を来世へ導く神聖な宣言と王妃の称号が記されている。対面する南壁にはホルス神が王妃を太陽神とハトホル女神へ導くシーンが描かれ、二つの場面が対をなして王妃の再生を二重に証明する。ラムセス2世が描かれていない点は、王妃が神々と直接関わる高い地位にあったことを示す。記事は、壁画が永遠の命を求める古代エジプト人の信仰と高度な芸術性を伝える学術的・文化的遺産であることを明らかにする。
(出典:artscape)