塚田優|さらに新たなるイメージ論へ向かって──前川修、佐藤守弘、増田展大編『イメージ論の冒険者たち』(後編)
概要
本記事は、前川修、佐藤守弘、増田展大編『イメージ論の冒険者たち』の後編の書評である。評者はまず、各章の論考を読むことでアビ・ヴァールブルクやハインリヒ・ヴェルフリンなどをめぐるイメージ論の地図が得られると述べる。一方で、モダニズムがやや相対化されていることへの懸念も示す。ロザリンド・クラウスやジェフリー・バッチェンの章ではモダニズムを批判的に継承する論者が扱われるが、クレメント・グリーンバーグやジョン・シャーカフスキーは独立して扱われておらず、前提知識なしには動機が汲み取りにくいと指摘する。しかしこれはイメージ論が各研究領域に拡散している状況の裏返しでもある。また、本書にはアンリ・ベルクソンやジル・ドゥルーズは取り上げられていないが、ティム・インゴルドの章ではドゥルーズ=ガタリの「逃走線」が接続され、デイヴィッド・フリードバーグの章ではアントニオ・ダマシオの名前も確認できる。前川修によるあとがきも兼ねた論考は、ハル・フォスターとキース・モクシーを取り上げ、理論同士を立体的に交差させ、ヴィジュアル・スタディーズの時代診断や美術史への変容を系譜づける。フォスターがデザインや建築にも言及している点も重要である。本書は学生を主な対象としながらも手加減がなく、評者自身も多くの発見があったという。長すぎない文章量で代表的論者の理論的骨子を把握でき、一般読者にも有益である。冒険に出るのは次は私たちの番だと締めくくられる。
(出典:artscape)