山﨑健太|『映画を撮りたいゾンビの演劇』
概要
『映画を撮りたいゾンビの演劇』(作・演出:岡田利規)は、東京芸術劇場の舞台芸術部門芸術監督就任第1作として上演された。ドイツのハノーファー州立劇場で書かれた最新作『Sliding Away』を日本版の出演者・スタッフとともに新たに創り上げたものである。物語は映画を撮ろうとするゾンビたちの撮影現場を描くが、実際に撮影は行われず、集まったゾンビたちはゾンビが映画を撮ることに関する持論を交わし始める。ゾンビを現実世界のマイノリティに重ね合わせ、〈人間のゾンビ表象〉の非対称性や表象の権力性を問う内容は、クィアなど様々な周縁化された存在をめぐる議論として読むこともできる。さらに舞台上のゾンビたちはメイクを拭い去り、自分たちがゾンビを演じる人間の俳優にすぎないことを観客に突きつける。劇場内にゾンビがひとりも存在しないという事実が明らかになり、観客の身体や存在を肯定する場をめざす岡田の思想が浮かび上がる。本作は『消しゴム山』から『リビングルームのメタモルフォーシス』へと続く脱人間中心主義の系譜に位置づけられる。俳優たちの魅力によって、ポリコレ的言説の演説会になりかねないテーマが飽きさせない上演として成立しており、社会へと問いを持ち込む演劇の可能性を示している。
(出典:artscape)