清水チナツ|隣人同士が助け合う手つきで──「PIKO HOUSE」と「絵本の広場」
概要
本記事は、宮城県南部の蔵王山脈のふもとの町に移住した著者・清水チナツが、地域の小さな場をレポートするものである。著者は震災後の東北で、日々の営みのなかにひっそりと存在し、誰かの生を支える表現や場を探し続けてきた。
ひとつめの場「PIKO HOUSE」は、もと商店だった建物を借りてニュイさんとリサさんが暮らす場所で、看板もなく、食堂や私塾など多様な使われ方をしている。震災後、都市部の閉塞感や教育現場の問題に向き合ってきた二人は、誰もが行きたくなる場所をつくりたいと考え、月に一度の「一七夜市」など、農家の食材や多国籍の人が集う開かれた場を運営している。
ふたつめの「絵本の広場」は、閉園した保育園を活用した自主運営の図書館で、震災時に被災地の子どもたちへ絵本を届ける活動の拠点だった。マキさんが15年にわたり場を開き続け、子どもたちが自由に過ごせるだけでなく、大人もくつろげる場所を目指している。運営費を捻出するための「猫の手サービス」や、利用者発案の「部活」など、地域の助け合いが根づいている。
著者は、これらの場が効率や専門性といった既存の尺度からはみ出しながらも、隣人同士が助け合う手つきで営まれていることを描き、畠山直哉の「このあたりからの眺め」やオアハカのアーティスト、民話の「はぐれ者たち」の言葉を引きながら、誰かが誰かに応じるささやかな営みの価値を問いかけている。
(出典:artscape)