「ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集」(練馬区立美術館)開幕レポート。架空の画家と戦後前衛美術が出会うとき、何が生まれるのか
概要
東京・中村橋の練馬区立美術館で、現代美術家・ユアサエボシの展覧会「ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集」が10月31日から12月27日まで開催されている。ユアサは1983年生まれ。古いイメージのコラージュを原案に絵画を制作し、2017年頃から「大正生まれの架空の三流画家ユアサヱボシ(1924〜1987)」という設定で作品を発表してきた。会場は3部構成で、第1章ではユアサの作品を制作年順に展示。架空の画家「ユアサ」の来歴(油絵具アレルギー、戦中のコラージュ、戦後の前衛美術会参加、渡米、帰国後の「舶来転写地様式」、1964年シェル美術賞佳作、1987年死去)が紹介される。作品にはユアサが「ユアサ」の作品を解説する体裁のキャプションが添えられ、自作を客観的に論じる趣向になっている。しかし展示はユアサの制作年順であり「ユアサ」の制作年順ではないため、近作の技術的向上と「ユアサ」の経歴が逆転する現象も生じている。ユアサは架空の画家の来歴を技術面までリアルに作り込むことよりも、画家と絵画を切り離し、絵そのもののいびつさや不可思議さを強調することを意図しているように見える。解説は歴史的背景に照らして作品を分析するアプローチをとり、例えば《青空》では児童労働を戦争への動員に重ねる解釈を示すが、その正しさは鑑賞者に委ねられている。第2章以降では、日中戦争を寓話化した《傀儡の王》と呼応するように、小川哲が生み出した架空の詩人・桐生冬一郎の詩集も展示され、架空の人物の歴史にさらに架空の物語を重ねることで鑑賞者の想像力を刺激する構成となっている。
(出典:美術手帖)