歴史、文化、民族——エストニアで考えたこと【連載:Passages #2】(文:山本浩貴)
概要
文化研究者・山本浩貴がエストニアに1週間滞在し、大学間交流のためエストニアアントレプレナーシップ応用科学大学(EUAS)を訪問した経験を記したエッセイ。人口約135万人の小国エストニアがデンマーク、スウェーデン、ロシアなどに侵略・支配されてきた歴史は、台湾の歴史とも重なる。独立後のエストニアはIT技術を推進し、首都タリンではスマートシティ構想が進む。ソ連支配への抵抗として起こった「歌う革命」など、文化には抵抗の力があることを指摘する。著者は占領博物館(The Vabamu Museum of Occupations and Freedom)やエストニア国立博物館(田根剛らが設計)を訪ね、美術館・博物館が民族的アイデンティティの形成に重要な役割を果たすことを考察。エスノセントリズムに陥らず、ロシア大使館前の反戦バナーなど連帯の表明も見受けられる。エストニア語の継承と英語浸透の現状にも言及し、旅は知らないことが山ほどあるという当たり前の事実を再認識させる内容である。山本は実践女子大学美学美術史学科准教授で、若手会議と授業見学の後、2日間の自由時間でタリン・タルトゥの文化施設を回った。
(出典:Tokyo Art Beat)