星野太|ジャック・ハルバスタム『クィアな時間と場所で──トランスジェンダーの身体とサブカルチャーの生』
概要
本記事は、星野太によるジャック・ハルバスタム『クィアな時間と場所で──トランスジェンダーの身体とサブカルチャーの生』(花伝社、2025年12月25日刊行、菅野優香・羽生有希・井上絵美子訳)の書評である。著者は個人的な回想から始め、COVID-19期にハルバスタムの講義動画を通じてその仕事に触れ、近年日本語圏で本格的に紹介され始めた経緯を述べる。本書は2005年原著刊行で、クィア理論の「時間論的転回」を代表する一冊とされる。ハルバスタムはクィアネスを性的アイデンティティに還元せず、奇妙な時間性やサブカルチャー的実践、オルタナティヴな同盟を含む「生き方」として理解する。空間/場所については、クィアな対抗的公共圏の生産や都市と田舎の分断に注意を向け、特にブランドン・ティーナ殺害事件と「大都市規範」概念を論じる。第5章「テクノトピアズ」では、J・A・ニコルズ、ジェニー・サヴィル、エヴァ・ヘス、デル・ラグレース・ヴォルケーノ、シリン・ネシャットら現代美術作家を分析し、「乱気流の美学」を提唱する。書評は、本書のクィアリングが現代美術にも根を下ろすと評価する。
(出典:artscape)