オープン記念レクチャー:メル・チン(「第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展」関連イベント)
概要
広島市現代美術館で開催中の「第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展」に関連し、2026年7月25日にオープン記念レクチャーが行われた。本稿はその模様をART iT編集部が編集し翻訳掲載したものである。チンは作品を年代順に解説するのではなく、自身の制作の根本にある考えから出発し、初期作から新作までを逸話と引用を交えながら語った。冒頭ではニューヨークでの初レクチャーの失敗談として《講義の斧》の背景を説明し、カフカの「本は我々の内なる凍った海を砕く斧でなければならない」という言葉や、エレイン・スキャリー『The Body in Pain』におけるホメロスの「矢は黒い痛みを積み荷として運ぶ」という一節を引用し、物体に観念を込めることが自身の作品の鍵だと述べた。続いて《嘘のかたち》では、真実が性的な力に押し上げられ胃(第二の脳)で止められながらも口から出る過程を説明し、素材のカトリナイトとアメリカの条約違反の歴史に触れた。《コウモリとハト》では対立する解釈と曖昧さを扱い、問いこそが鑑賞者の所有物だと語った。《許されざる者の十字》ではAK-47を十字形に溶接した作品を通じ、象徴が権力や信仰に仕える変節を論じた。《カロライナの亀(ヒルビリーの鎧)》では、ラムズフェルド元国防長官の「手持ちの装備で戦うものだ」という発言と、兵士たちが即席爆発装置から身を守るためにスクラップを車両に付けた「ヒルビリー・アーマー」に触れ、テネシーのハコガメとハンヴィーをリサーチして制作した経緯を説明した。最後に《私たちの民主主義の奇妙な花》では、ベトナムで使われたデイジーカッターを竹で実物大に再現し、湾岸戦争時に米軍が投下した「逃げれば生きる、留まれば死ぬ」と記された宣伝ビラを背景に、民主主義の名の下に行われた暴力を問いかけた。
(出典:ART iT)