塚本麻莉|国際展と街のあいだ──ピッツバーグ、カーネギー・インターナショナルを歩いて
概要
高知県立美術館の学芸員である筆者は、日本の現代美術を専門としながらも海外との接点が限られていたが、ここ数年でアメリカとの関わりが増えた。特に地方都市ピッツバーグのアートシーンに関心を抱き、1896年から続く北米最長の国際展「カーネギー・インターナショナル」を訪れる機会を得た。筆者は、国際的な現代美術の文脈と現地住民の生活がどう接続するのか、また、100年以上にわたり同じ土地で国際展が続くとはどういうことなのかを探るため、ピッツバーグを訪問した。
第59回展「If the word we(もし、私たちという言葉が)」では、61組の作家・コレクティブが参加し、「we」を固定された集団ではなく、異なる者同士が共存し聴き合う関係として捉えている。展示では、先住民族のコレクティブ、中国のアーティスト、ブラジルのアーティストの作品に加え、日本人作家の杉原玲那や勅使河原蒼風(草月流)の作品も紹介され、移民、植民地主義、共同体といった重厚なテーマが扱われていた。
一方で、会場では国際展と常設コレクションが入り混じり、独特な距離感で併存している点が特徴的だった。コレクションには著名な作家の作品が多いのに対し、今回の国際展では筆者が初めて見る作家が多く、アジアや中南米など従来の欧米中心のアートワールドから見えていなかった地域の作家が多数参加していた。ピッツバーグのアートシーンを支えるガラリーを訪ねた筆者は、国際展によって一時的に活気が生まれても、そのエネルギーをどう持続させるかが地域の課題であることを認識した。この経験は、日本の地方都市にとっても他人事ではないと感じたという。
(出典:artscape)