星野太|古田徹也『懐疑論』
概要
本書は、日常生活における「懐疑」の哲学的起源を古代ギリシアの諸流派に遡り、西洋哲学における懐疑論の歴史を概観している。前半では、プロタゴラスやピュロン主義といった古代懐疑主義の立場が紹介され、後半ではモンテーニュやデカルト、ウィトゲンシュタイン、カヴェルを通じて近代以降の懐疑論の姿をたどり、批判が加えられる。著者は、近代的な「全面的懐疑論」が「世界像」や「生活世界」といった足場そのものを懐疑の穴に投げ込む無責任なものであると指摘し、それに対して、絶対的な真実を求めずに探究を継続し、心の平穏(アタラクシア)を追求する「大人びた」懐疑を展開した古代懐疑主義の意義を再発見する。本書は、現代の陰謀論に代表される無責任な懐疑に対処するための処方箋としても機能し、他者との対話に基づいた建設的な「生活世界」の構築を促している。
(出典:artscape)