高嶋慈|果てとチーク・めぐる公演『きみはともだち』(前編)
概要
本稿は、果てとチークによる舞台公演『きみはともだち』(2026年7月、三重公演)の前編レビューである。作品は、地下カラオケ店を舞台に、ノンバイナリーの野澤、その旧友園、園の恋人甲斐田、そして店で働く衛の4人が繰り広げる会話を描く。物語の核は、トランスジェンダーの女性ノリちゃんが経験する困難——結婚式での不適切な言動、転職先での差別、SNS炎上とリストカット——以及其(その)に直面する野澤の葛藤である。園は「しんどいのはみんな同じ」と慰めようとするが、野澤は「あたしとあんたのしんどさは、違うんじゃない?」と反論する。この対立は、マジョリティがマイノリティの痛みを「同化」しようとする構造、トランスフォビア、ジェンダー規範、ホモソーシャルな男性社会の問題を浮き彫りにする。さらに、園と甲斐田の間にも結婚や子供に対する価値観の相違が潜み、個人の抑圧が増幅され、最終的に衝突へと向かう。レビューは、作品が「ヘイト(hate)」と「希望(hope)」という二重の意味を携えた演劇ユニット「果てとチーク」の名前のように、言葉と社会構造の重層性を鮮やかに解きほぐしていると論じる。
(出典:artscape)