内海潤也|前回の続き その1──展覧会をこさえるようになるまで
概要
アーティゾン美術館の学芸員である内海潤也は、展覧会を「作る」のではなく「こさえる」と表現することにこだわりを持っています。これは、作品が世界に残る時間の長さで価値が決まるのに対し、展覧会は限られた期間だけ空間を立ち上げ、終われば解かれるからです。彼の展覧会づくりの出発点は、国際基督教大学(ICU)での学びでした。西洋美術史を専攻しつつ、フェミニズム/ジェンダー論や現代美術の展覧会史に触れ、作家像や作品論の見方を変えました。卒業論文では、ロシア・アヴァンギャルドの画家ナターリア・ゴンチャローヴァの多様な制作活動に違和感を抱き、作家像も単線的な流れではなく、作品の関係性から立ち上がるものだと考えました。さらに、第14回イスタンブール・ビエンナーレ「SALTWATER」を訪れた経験は決定的でした。36の会場にまたがるこの展覧会は、中心と周縁の階層を打破し、来場者の身体的な経験や「見えない」要素まで含めた関係性から展覧会を立ち上げる構造を示しました。この経験から、彼は強いテーマを中心に置くのではなく、複数の要素の関係性から展覧会を構築する方法論を確立しました。現在は、横浜の黄金町エリアマネジメントセンターでの滞在制作の経験や、現職での「ジャム・セッション」展などで、既存の作品だけでなく、新たな作品が生まれるための条件も含めて展覧会を「こさえる」実践を行っています。
(出典:artscape)