影山幸一|ピョン・ウォルリョン《板門店での北朝鮮捕虜送還》対立から和解へ──「喜多恵美子」
概要
本記事は、韓国の画家ピョン・ウォルリョンの代表作『板門店での北朝鮮捕虜送還(1953年)』を、大谷大学国際学部教授の喜多恵美子氏が解説するものです。喜多氏は、この作品が1953年の板門店における捕虜交換の現場を記録した記録画であると指摘します。特に、北朝鮮の捕虜たちが国連軍から支給された服を脱ぎ捨てて帰国するという逸話を描いた点に着目し、これは単なる記録にとどまらず、戦争という対立構造の中で「人間の尊厳」を証明しようとした画家の意志を表していると論じます。また、ピョン・ウォルリョンの生涯についても触れ、彼がソ連で学び、北朝鮮の美術復興に貢献した後、中ソ対立の影響で粛清され、長く忘れ去られていた経緯を紹介します。2016年の回顧展を通じて再評価された彼の作品は、植民地支配、戦争、分断という激動の20世紀の歴史と重なり、対立から和解へと向かう人間の営みを映し出しています。
(出典:artscape)